1話 異邦の少女(3/5)
<ヒソゥの森>
…………。
…………。
(俺の見間違いじゃなきゃ…女が倒れてる。
人気の無い森で、若い女が、無傷で。)
うつ伏せで動かない少女の側まで歩き、
自身の見当がその通りであることを確認する。
足を開いてしゃがみ、じろじろと眺めて
(何かの罠か? 罠だよな。
獣に襲われてねぇのも不自然だし)
*倒れ伏す少女から視線を外し、行き先へ身体を向けて*
(やぶ蛇は無視に限る)
*ガシッ*
うぉわッッ!!?!
お…にく……
(コイツ…なんつー力だ!
アンデッドか、魔術師の仕掛けたドールの類だったか!?)
くそっ、離せ―――
ぉにく…、ください……。
おなか、すい…て……
はぁ……?
足首を掴んでいた相手の手首の脈をみる。
微弱ではあるが、一定の間隔で脈動が伝わってきた。
(人間か…。驚かせんなよ)
助かりました…。3日ぐらい、何も食べて無くて……。
そんなに森を彷徨っててよく無事だったな。
その…私が使ってた道具が、急に全く効かなくなって…迷ってしまって……。
そりゃ運がなかったな。
だとしても、その道具一つを頼りに、一人で森に来るのはあまり利口に思えねぇけど。
うぅ、そこを突かれると痛いですね…。
(わかりやすく しおれるなコイツ)
わざわざ食料を分けたのに活力が削がれては困る。
不注意を指摘するのもほどほどにして、
荷物を持って立ち上がった。
あんた道がわからないんだろ。
案内してやるから行こうぜ
え? でも…。
俺は一度通ったことあるから、道を覚えてるんだよ。
この森を通るならどうせクルムラドだろ。
*ふらつきながら立ち上がるミオラに手を貸し、杖を渡した*
…!! は、はい…!