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8話 邂逅(1/5)


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明日の術式の件だが…〇〇〇、お前に頼みたい。

魔術師

は? なんで俺?
学院ナンバー1の△△△のほうが適任じゃないのかよ

<????>
あぁ、アイツは確かに優秀だな。
あらゆる面で魔術師として頭一つ抜けてる。だが集中と持続力に関してはお前サンの方が上だ。

<????>
今度の術式は絶対に中断しちゃならない。何が起きてもな。
深く潜れる奴じゃないとダメなのさ。それに関しちゃ、〇〇〇も自信あるだろ

魔術師

…………。

<????>
まぁ俺が決めた以上、お前サンたちに抗議する権利は無いわけだ。
いつも通り、しっかり役目をこなすように!

そうやって、いつも通り、
俺はただ言われるがままに与えられた指示をこなした。

床に描いた術式に座し、自らの魔力を注ぐ。
その繋がりをもって、魔術という名の奇蹟と交信し、
深みへ降りていく。

そして気が付いたときには―――

残っていたのは、黒の書あの本だけだった。

線

<クルムラド 貪欲の小枝亭>

ヤブ

いや~よかった~、本気でよかった~!
吸血鬼に睨まれて生還できるなんて! 人生捨てたモンじゃないっすね!

ヤブ

これも一重に力を貸してくれた皆々様のおかげなんで、早速酒いっちゃいましょ

ストリィ

待った。アンタの言ってた吸血鬼…『イェレ』について話すのが先よ。
酔ってたから~って煙に巻かれたくないからね。

ヤブ

チッ

ミオラ

(なんてわざとらしい舌打ち…)

ストリィ

…まぁ、大体想像はついてるけど。

ストリィ

ヒソゥの森でイェレに手を貸してた神経魔術師…。
それってアンタでしょ、ヤブ。

ミオラ

!?

魔術師

…………。

ヤブ

え~? いくら俺がイェレさんを知ってたからってヤダなぁ。
シャドウをもらったのは別の吸血鬼かもしれないっしょ?

ヤブ

…なーんて、もう隠す必要もないんで、おおむねその通りっすけど。
どうしておたくがそれをご存知で?

ストリィ

それは―――

イェレ

ここにいたのかストリィ。

魔術師

!!

ヤブ

げっ!!

不意に背後から声がして、
魔術師は突然現れた気配、
ヤブは覚えのある声色に驚いて振り返る。

そこには表情の薄い、
緑衣を纏った青年が立っていた。

魔術師

(察するに、コイツが今回の騒動の吸血鬼か…。)

魔術師

(…初めて見たが、本体もここまで魔力を隠せるのかよ!?
一般人と見分けがつかねー。反則だろこんなん)

ストリィ

どこにいようがアタシの勝手でしょ、イェレ。
どーせアンタにはどこにいようがわかるんでしょうし。 現にそうなってる。

イェレ

あぁ。
魔術の心得のない人間の魔力を辿ることは…赤子の手を捻るくらい容易だからな。

イェレ

なにやら見ない顔も多いが…。
ん。

ヤブ

*目をそらす*

イェレ

お前、ヤブか?

ヤブ

いやー、他人の空似じゃないっすか?
俺はユリシーズ・ウィンターなんで

イェレ

シャドウの反応がなくなった気はしていたが…。
お前にあれをどうにかできる技量はないと踏んでいたのだがな。

ストリィ

そりゃあコイツ一人の功績じゃないからね。
このアタシも力を貸したわけだし。

イェレ

これも巡りあわせ…か。

ストリィ

アンタ何当然のように座ってんのよ

ヤブ

というかイェレさん 俺の処遇はもういいんすか??

イェレ

? 既にシャドウを退けたんだろう。
口封じにこれ以上の労力を割くつもりはない。
足りなかった血も、ストリィを得たおかげで必要なくなったからな。もう不問でいい。

ヤブ

神様女神様ストリィ様、ありがとうございます!!

ストリィ

ほんと調子のいいやつ…。

イェレ

それにヤブ程度の人徳では、俺の存在を吹聴したところで 耳を貸される心配もない。

ヤブ

……なーるほど。
ま、それならありがたく、またイェレさんの品物を楽しませてもらいますか。

ミオラ

…………。

ヤブ達がやり取りを進める中、
ミオラは手をまごつかせながら
視線は彷徨い、口を閉ざしていた。

イェレ

そこの女は顔色が悪そうだが

魔術師

(そりゃミオラにとっては、ヒソゥ遭難の犯人が唐突に2人も現れたようなもんだからな。 混乱して当然か。)

魔術師

(だが…丁度いい)

魔術師は席を立ち、
まだ人気ひとけもまばらな酒場を歩く。

向かいに座っていたミオラの隣まで移動してから
イェレを見据えて口を開いた。

魔術師

生憎、俺らはアンタの影に殺されかけた身なんでね。 同席してて気分のいいもんじゃない。
俺は慣れてるし、話もなんなら聞きたいくらいだが…。

魔術師

少し席を外す。…ミオラもそれがいいだろ

ミオラ

え?
は、はい…!

魔術師に促されると、
ミオラも同様に立ち上がって後に続く。

二人は部屋に向かうべく階段を上がっていった。

ヤブ

…………。

イェレ

どうやら俺はお邪魔だったらしい。

ストリィ

そりゃそうでしょ!?
ここにいるアタシたち全員、アンタの被害者なんだからね!