- 0話 或る魔術師
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- 10話 澱める風
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9話 それぞれの矜持(2/6)
<昼前 激熱の赤髭亭>
(結局勢いに圧されて入ってしまった…。
まぁタダ飯にありつけるならいいか。)
そういや名前聞いてなかったよな!
オレはライノ。にーちゃんは?
魔術師。
え?
あぁ、それはもうさっき見たからわかってるぜ?
魔術師でいいって言ってるんだよ。
わざわざ名乗るほどの人間じゃないんでね。
マジかよ、通りすがりだからってそこまでカッコつけなくてもよくねーか…?!
世の中いろんなヤツがいるんだよ
なるほどなー、確かにそうかもな!
ま、顔がわかればそれでいっか!
(単純なヤツだな)
問答をしている間にも
ライノは厨房で手を動かして、
調理器具やら食材の準備を進めている。
やがて火で熱せられた金属を通して、
肉の焼ける匂いが、
音と共にカウンターに座る
魔術師にも伝わってきた。
(料理、か…。学院にいた頃はやってた時もあったが、ここ最近はさっぱりだな。
やっぱり拠点がないと自炊なんて中々できるもんじゃな―――)
たっだいま~!
お肉のいいにおいする~!
!!
…と、知らないヒトー!
"これ"おきゃくさん?
"これ"じゃねーよ、恩人だよ恩人!
「えるふ」がいない時に取り立てが来たんだよ!
そこを魔術師のにーちゃんが助けてくれたんだぜ!
えーっ?! アイツらまたきたんだ!
ボクがいない時にヒキョーだな~!
あんた、その耳……
へへーん、長くてカッコいいでしょ!
マネしてもいーよー! ボク以外に見たことなくてさみしーから!
…………。
(この長耳は…。本で読んだ架空の種族、『エルフ』の特徴だ。
初めて見た…というか、実在するのか)
(また変な奴らと遭遇してしまった気がする…)
***
<同刻 貪欲の小枝亭 一室>
…ってな具合に、
神経魔術師は『魔波』っていう魔力の流れを操って、有利な状況を作ってるわけっすねー
…………。
…………。
ミオラちゃーん
はっ!!
だいじょうぶです、きーてます!
細かい理屈はわかりませんが…私には目に見えない魔術の領域で、相手にちょっかいを出している…ということですよね!
おおむね その認識で間違ってないっすね~。 で、
それならよかった…、魔術師さんから聞いた通りで。
あ、魔術師さんから予習済みだったんすね
はい! それで念のために同業のヤブさんにも話を聞いておきたくて。
どちらかが、嘘を言ってるとも限りませんから…
(用心深くなっちゃったなぁ~)
…って、あれ。
俺はともかく、魔術師さんも俺と同等の信頼度に落ちちゃってません?
もしかして昨日何かありました?
え!!?
えーーっとですね……
(わかりやすぅ)
ダメっすよミオラちゃん、
!!
ヤブはおもむろに椅子から立ち上がり、
対面に座していたミオラの眼前まで
近づいて膝をつく。
相手の眼を見つめたまま
恭しく左手を取り、
自身の右手と絡めて結んだ。
今はタリスマンで魔衣バリアもあるみたいっすけど、 神経魔術なんてまどろこっしいことしなくても、触れて干渉しちゃえばどうとでもできちゃうんすから―――
*絡められた手に渾身の力で握り返す*
いだいいだいいだいいだい
おっしゃる通りのようですね。
わかりやすくて助かります!
…………。
あ。
いつの間にか音もなく
扉が開かれていたことに気が付く。
そこにはストリィが立っていた。
…ったく、朝食に呼びに来てみれば…油断も隙もない野郎ね
わ!? ストリィさん!
おはようございます!
おはよ。ま、毎回アタシが助太刀しててもしょーがないんだけど。
その様子なら大丈夫そうね
ヤブの言う通り、魔術師なんて物理でシバくのが手っ取り早いんだから、妙な動きする前にさっさと先手取っていくのよ
はい!
イェレさんを相手にしてる人だと言葉に重みがあるっすねー…。いてて