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9話 それぞれの矜持(6/6)
<昼下がり 農村ヘルドマ近郊>
ほらー、しゅーらくが見えてきたよ!
えるふの近道論、信じてせいかいだったでしょ~
「街道逸れて行く!」って言って聞かないときはどうしようかと思ったっすけど…
やっぱり冒険者たるもの、近道開拓もチャレンジしないとっすよね~
お手柄っすよ えるふ
いつもこの勘で食材もあつめてるからねー、あさめし前だよ!
信じらんねぇこいつら……。
マジで道中ずっと話して続けてやがる……。
まぁまぁ……、絞めて絞められてをしてた時と比べたら、平和で何よりですよ!
…………。
だから! 騎士さんまで向かったら誰がココを守るんだって
ですが……。
あ! 門番がいるー
あいさつ準備!
村の門番の割には装備が厚そうな
あれは…騎士?
えるふの勧めで起伏の緩やかな
林の中を進んでいた一行は、
無事目的の農村を視界に捉える。
そのこじんまりとした門前で、
村人と思しき青年と騎士が
表情を暗くして話をしている様が見えた。
何かあったのか
? どちら様で―――
!! あなたたちは…
?
(騎士に顔覚えられるようなこと しでかしたか?)
あ。
魔術師さんあれっすよ。最近出された、魔獣の御触れの時にいた騎士の一人では。
魔獣警戒令の際にあなたたちもいらしていたのですね。
面識があったのはそちらではなく―――
クルムラドへの帰還の折…。凶獣ベヒモスに追われていたところを助けていただきありがとうございました。
不肖シルルド、遅ればせながら仲間たちの分も重ねて感謝を。
あぁ、あの時の騎士たちか。
ご丁寧にどうも
道理で既視感が…。
私はミオラです、困ったときはお互い様ですよ!
…………。
騎士さん、ちょっと……
っと、失礼。話が逸れましたね。
申し訳ありません、冒険者殿。
実はこちらの集落…農村ヘルドマでは問題が発生していまして。
作物に渡らせるための水が、日々減少しているのです。
色々噂には聞いてたが、水不足だったか
そうそう。
街に野菜が届かないからって買い付けの使いに来たのなら、残念だけど無駄足だ。
今はそれどころじゃないんだよ
言うほどこの辺って 雨が降ってなかったんでしたっけ?
そんな印象ないっすけど。
何か原因はわかってるんすか?
それが……
首 突っ込むんならちょうどいいや。
あんたら冒険者なんだろ?
騎士さんの代わりに洞窟の調査に行ってくれないか
? どういうことですか?
俺たちの村に敷いてる水路の水源が、近くの北の洞窟にあるんだ。
そこを調査しに行った奴と騎士さんの一人が……一日経っても帰ってこなかった
そんな…!
へ~、わかりやすくていいじゃないっすか。
水源に何か起きてるのが確定してるなら、その原因がわかれば水不足が解決する可能性が高いわけでしょ
…………。
…………。
ヤブさん、当人たちの前でそんな言い方…!
すみませーん。
同情とか気遣いって、一銭にもならないもんで。
申し訳ありません。僕たちの力が及ばないばかりに…。
ですがそれに、冒険者殿を巻き込むわけには
構わねぇよ。
こっちも元からそれ関連の依頼で来てる。
御覧の通り、振る舞いを考えない程度には、冒険者の命と足は軽いんでね。
その洞窟の件抜きでも近頃物騒だ、村の人間も騎士様に守ってもらう方が安心だろ。
ほら、冒険者の人らも言ってるわけだしさ。 頼むよ
任せてください、シルルドさん!
私たちは魔獣には少しばかり一日の長があるので…魔獣であろうと蹴散らして戻ってきますよ!
…………。
…わかりました。
僕は賊と獣の脅威から、ヘルドマを護ることに注力します。
どうかお気をつけて…!