目次
神経魔術師バナー
飾り線

6話 影の支配者(2/6)


<いつかの出来事 ヒソゥの森にて>

ミオラ

うーん…

ミオラ

(結構歩いた気がするんですが、景色が変わり映えしてないような…。)

森で迷う原因は、
進むべき方角を見失い、
あてどなく彷徨ってしまうことにある。

けれどそれは森に慣れていないから
起きるのであって、

幼少から森で狩猟を
続けてきた私にとっては、
立ち並ぶ木々も
居場所を知らせる目印だった。

ミオラ

…………。

一度見た目印があるのなら、
そこからまた方角を修正すればいいだけ。

それなのに、
見かけたはずの木々の並びが続く…。

この状況は異様だった。

ミオラ

!!

ミオラ

なんで、動いてない……。

私が幼い頃に、
祖母が密かに与えてくれたお守り。

星の見えない夜でも、
私を家路まで導いてくれた。

その羅針盤コンパスが、全く機能していなかった。

ミオラ

(こんなこと、故郷の森でも、今までも…一度もなかったのに…。)

進めていた歩みが止まり、
沈黙とともに静寂が一帯を支配する。

それに―――

ミオラ

(鳥のさえずりも、虫の声も、聞こえない…?)

そうだ、この森は静かすぎる

森に入ったばかりの時は、
そんなことはなかったはずだ。

一体何時から―――

ミオラ

……ッ、

違和感の正体が明確になると同時に、
恐怖が身体を蝕み始める。

ミオラ

しるべが、何もない…。

どうすれば―――

―――

ミオラ

!?

私の恐怖を体現するかのように、
死の一端伝えてきた存在が
いつのまにか眼前に立ちはだかっている。

それは少しずつ、
こちらに距離を詰めてくる。

あの時の凍てつく感覚を想起し、
身体が思うように動かせず、呼吸が浅くなる

ミオラ

いや…、来ないで……!!

ミオラ

!!

まぶたが開かれると、
明かりがついたままの
個室の天井が、ミオラの視界に映る。

嫌な汗が滲むのを感じながら、
此処が現実であることを
確かめるように手を掲げ、
握って開いてを暫く繰り返していた。

ミオラ

…、あの時の、夢……。

ミオラ

…………。

*コン コン*

ミオラ

温もりに思いを馳せながら
手の平をぎゅっと縮こませていると、
ノックをする音に顔を上げた。

ミオラちゃん、起きてるっすか?

ミオラ

ヤブさん?

今は自分が思っているほど
夜更けではないのだろうか。

悪夢からの寝起きで
明確な時刻もわからないまま、
ミオラは戸を開けた。

ミオラ

何かご用ですか?

ヤブ

あ。よかった起きてた!
ちょっとお願いがあってっすね

ミオラ

はい、なんでしょう?

ヤブ

…………。

ミオラ

…………。

ヤブ

あれ?

ミオラ

??

ヤブ

いや、だって前は効いてた―――

ミオラ

あの…

ミオラ

そう怪しい素振りをされると、
こちらもそれなりの対応をせざるを得なくなるんですが…

ヤブ

や、待って待って違うんすよ
構えないでグー作らないで

ヤブ

…見たとこ顔色悪いっすし、 ミオラちゃんも悪夢で眠りが浅いってところっすか?

ミオラ

!!
も、ということはヤブさんも…?

ヤブ

いやー、恥ずかしながらそうなんすよ。
なんでこれからゴーストを撃退した、頼もしい魔術師さんのところにお邪魔しにいくところなんですが、 ミオラちゃんだけ仲間外れは良くないなと!

ミオラ

そうだったんですね…!
私もこれから、魔術師さんを訪ねようと思ってたので…。 ヤブさんもいるなら行きやすくて助かります!

ヤブ

それなら渡りに船っすね!
目的が一致してるなら、早いとこ魔術師さんの部屋にお邪魔しにいきましょー

ミオラ

はい!