- 0話 或る魔術師
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- 7話 壊れ、移ろう
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- 10話 澱める風
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9話 それぞれの矜持(4/6)
えーと、ここが『激熱の赤髭亭』ですかね?
おそらくそうかと。
アツそうな炎のマークのロートアイアンもあることですし
なら、早速参りましょうか!
失礼します―――
!!
おう。わざわざ悪いな
こんにちは~!
わぁ…、ほんとに合流できた…。
呼石ってすごいんですね!
戸をくぐると、酒場の人間から想像していた
人物像よりも幼い人影二人と、
見知った顔が目に入る。
初めて会う相手に小さく会釈するミオラの後に、
ヤブが続いて入店した。
どーも、お初にお目にかかります。
こっちはミオラちゃんで、俺はヤブっす。
え~っと…
えるふはえるふだよ!
よろしく~
オレはライノ!
よろしくな、ミオラ、ヤブ!
そんでこれは歓迎の肉!
…………。
無事合流できたミオラとヤブは、
魔術師を挟む形で並んでカウンター席につく。
肉しか置かれていない
料理皿を出されるのをよそに、
ヤブは えるふをまじまじと眺めて
…あんな耳の長い人型の女の子初めて見るんすけど、 怪しい団体とか権力に目ェつけられたりしません?
知らねー。
本人やライノが気にしてないならいいんじゃねぇの。
案外堂々としてる方が周りも気にしないもんだろ。
一理ある。
私はもう、"世の中どんなことも起きる"って気持ちでいるので…。
えぇ? 冒険者から見ても、そんなにえるふって珍しいのか?
叔父さんにもあんま言いふらすなって言われたけどさー…
でもぼーけんしゃって、実はただのざつよー係なんでしょ?
セカイに対するたんきゅーしんが足りてないんじゃないのー?
めっちゃ煽るっすねこのコ
その雑用係に着いてくる気なら
ちゃんと話聞いとけよ
おっけー!
えっ?
えるふさんも一緒に来るんですか?
うん! ボクってけっこー強いから!
ナンクセつけてお金をとりに来るヤツらを
ちぎっては投げてるんだ~
え…!?
えるふオマエ、チンピラを八つ裂きにはしてない、よな…!?
難しい言い回しを知ってて えるふは賢いっすね~
えっへん!
(仕切らないと話が逸れるヤツしかいないのかココ……。)
それよか依頼の話をするぞ。
さっきライノは魔獣を倒して来いって言ったが…、具体的に倒してほしい標的が既にいるのか?
いや? 魔獣が原因ならソイツを倒せばいいんじゃねーかと思って言っただけだぜ。
具体的な名前とかどこにいるかとかは、オレは知らねー…。
そうか。
なら必ずしも俺たちが魔獣を倒す必要はないよな。
あんたの望みは、食材が入手困難…さらには悪化しそうな今の状況が、好転することだろ。
お~、言われてみればそっか。
で、治安が悪くなって出没するようになった賊も、
俺たち3人が多少 のしたところで効果は薄いだろうな。
そこは近いうち、クルムラドが騎士団なり冒険者なり使って人海戦術で対策するはずだ。
ふむふむ
よって、俺たち「蒼の黎明」が依頼を達成するためにやることは…"農村の現地調査をする"。で、どうだ?
解決できなくても、原因がわかればライノも今よりは安心できるだろ。
なるほどなー。
確かにそれがいいかもな。
(よかった。
案外 話がわかる奴だな。)
年相応に思ったことを
口に出してるだけかと思っていたので、
確認も兼ねた依頼提案が承諾されたことに
内心安堵する。
魔術師の言葉によって、
依頼が現実味を帯びたと感じたのか、
思い出すようにライノは腕を組んだ。
さっきは農村の畑の調子が悪いって言ったけどさ、"病が流行ってる"だとか"水源がもう駄目"だとか、みんな言うこと違うんだよ。
情報があやふやなんだよな~ 農村で何か起きてることは確かっぽいけど
それに、父ちゃんや叔父さんたちと違って、俺は―――
?
――…いや、なんでもねー!
農村は確か、ヘルドマって名前の場所だったはずだぜ。
えるふともどもよろしくな!