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10話 澱める風(1/--)
<農村ヘルドマ 北部の洞窟>
ヤブはわかりやすいって言ってたが……全然わかりやすくねぇよな。
どう考えても、調査に行った奴らが生還してた方がもう少し情報あったろ
まーあれは言葉の綾っすよ。
命も成果も持ち帰れなかったわけっすけど、唯一の持ち帰れた情報は危険があること一点っていう
お前がそうやって嫌味ばかり言うから、あの村人の口割らすのに時間かかったろうが
そんな物騒な言い方するようなことしてないですよね私たち!?
ミオラがいてよかったよね~
かわいくてやさしいから油断して話してくれたもん!
ゆだん…
…………。
集落から遠くないとのことだったので、
日が落ちる前に事を進めるべく、
準備もそこそこに魔術師たちは
洞窟を調査していた。
一行は魔術師が生成した灯りと松明を頼りに、
停滞し、じめっとした空気が
纏わりつくのを感じながら、
暗闇の続く岩肌の中を進む。
(あいつが言ってた通り、歩きやすい洞窟だな。
足場は多少滑るが許容範囲だし、人が不便せず通れる広さがある…。)
…あんたらは、二人を襲ったのは何だと思ってる?
うーん…。賊が居ついて襲っている…というのは線が薄そうですよね。
話を聞いたところ、農地への水が不足している以外には不審な事件は起きてないとのことでしたし。
俺も人間じゃなさそ~って程度っすかね。そういう魔術師さんは?
大して変わんねぇな。
こんだけ情報が少ないなら、下手にアタリをつけるよりも出たとこ勝負で集中したほうがいい
わかりやすくてたすかるー!
じゃ、えるふもしゅーちゅーしよっと―――
――― !
ここの頭ぶつけそうな道の先…何かいる気がする!
…情報の通りなら、この先は水源があるって言われてた空間だな
索敵できるの助かるー
じゃあ俺は殿務めるんでみなさんお先に…
では私が先陣を務めます!
何かあったらカバーをお願いしますね!
気をつけろよ
ミオラ、えるふ、魔術師、ヤブの順で自然と列が成され、
人が二人並んで通れるほどの路を歩く。
光源を持ちながら得物を構え、
足場に気を付けていたが―――
痛でッ
あ?
魔術師の後ろを歩く男は、
パーティーの中では最も長身である。
おそらく頭をぶつけたのだろう。
普段なら気にしないが、
この先に進めば
何かに遭遇する可能性を
えるふが既に示している状況である。
振り返ってヤブを見れば、
押さえている額から血が流れていた。
あー、打ち所が悪かったな。
血ぃ出てるぞ
うわ~、マジっすか
てっきり水滴かと思ったんすけど
ヤブ、けがしたの~?
えっ、大丈夫ですか?!
大丈夫っす、かすり傷なんで。
とりあえずこの路抜けちゃいましょー
…………。
そういやあんた、あの村人にやけに突っかかってたが…何かあったのか
いやー、別に?
初対面の赤の他人っすよ
ただまぁ…、あの包帯の巻き方が気になるというか下手くそというか、その辺で引っかかったのかもしれないっすね
(包帯ね…。確かにえるふも気にしちゃいたが)
あんた、ここに吸血鬼がいると思ってるか?
可能性はゼロではない。くらいの期待値っすかねー
餌を寄せるためとはいえ、都市にパイプのある集落のライフラインを止めるのは、事の大きさ的にあまり利口じゃないと感じるんで
ヒソゥは利口な部類なのか…
いや~、あれはもう潮時!ってタイミングでしたし、ギリギリのラインっすよ
とまぁ…、俺とのおしゃべりが楽しいのはわかるっすけど、俺たちも行きましょ
ミオラちゃんを心配させたくないっすからね
……あぁ。そうだな