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5話 白き影(4/6)
<邸宅内 カロリーナの部屋>

ねーちゃん!

あら。
どうしたのディム、そんなに慌てて

…あの子の身体は?

ないよ! だってデコイが効かなかったんだ!!

えっ?

苦しそうにしてたけど…、デコイがいなくなったらケロッとしててさ。なんでか身体を奪えなかったみたいだ

こんなこと今までなかったのに…オレ、どうしたらいいかわかんなくなって――

…大丈夫よ
ディムを抱き寄せ、あやすように頭を撫でる。
少年の動揺とは対象的に、
冷然と口を開いた。

全部うまくいくから。

<邸宅内 ヤブの個室>

えーっ、そんなヤバめの奴が今この屋敷にいるんすか!?
無事でよかったっすねー、ミオラちゃん。

…ミオラちゃんっすよね?

わ、私は私です! 怖くなること言わないでください!!

俺が言うのもアレっすけど、 護衛対象そっちのけで俺のとこに来てくれたんっすね

悠長だって言いたいのか?

悪く言うとそうなるっすかね

まぁそうかもな。
でも、それで良さそうだしな

というと?

いくら冒険者に失望したっつっても、死にかけた人間を目の当たりにしてから
単独行動するのも変な話だろ。
元々追いかけられてたのはディムなんだろ?

そう言われてみればそうかも…?

つまり、魔術師さんはディムが怪しいと睨んでいる、と。

ん。

じゃーもう逃げて良くないっすか? 報酬も用意されてないでしょーし。

それもいいと思うぜ。俺は残るけど。

え?

何でェ??

撃退するなり向こうから退いてもらえれば、ここにある金目のモンを多少持ってけるだろ。

あ、魔術師さん勝算あるんすか? じゃあそうしましょう!
無報酬もそれはそれで困るっすし

(ベヒモスといいゴーストといい、変なのが湧きすぎてる。
今回は話ができそうな手合だから情報がほしいってだけなんだが)

別に勝算はねーよ。
ただ、ミオラの話を聞くかぎり、霊体に対抗できるのは魔術くらいじゃねーのって程度。命が惜しいなら退くのが真っ当だと思うぞ

いや遠慮しとくっす。
魔術師さん居ないでゴーストに会ったら死ぬってことっすからそれ!

そういえば…。

?

私がゴーストに襲われた直後、ディムくんが小さい声で言ってたんです。
「なんで。」って…。

…………。