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2話 自称、ヤブ(3/6)


<ニィーギ平原 休憩所前>

流れで戦闘を行うことになった面々は、
平原に吹く風を受けながら自ずと対峙して配置につく。

それらを見やりながら、事を促した
胡散臭い青年が咳払いした。

???

…えー、それでは…
誘拐疑惑の神経魔術師! VS 義憤に燃えるチンピラ3人!
の審判を務めさせていただくっす。

<筋肉質な男>
お前もチンピラみてぇな顔してるだろうが!

魔術師

…………。

魔術師

(斧持ちの筋肉ダルマと、小賢しそうなナイフ使い…、そんで弓使いか。前衛と後衛のバランスが取れてるな。
やれるならさっさと弓使いを落として、残りに集中できるようにするか。)

ミオラ

魔術師さん!

魔術師

なんだ?

ミオラ

私、魔術師の方とは組んだことがなくて…。
なにか注意したほうがいいことってありますか?

魔術師

注意な…。やってみないことにはわかんねぇが――
(どうせ奴らはミオラじゃなくて、俺を狙ってくるだろうから)

魔術師

あんたは好きに動け。
俺はそれをフォローする。

ミオラ

はい、わかりました!

ミオラ

えーと、あまり怪我はさせたくないから…

ミオラが腰に帯びていた双つの剣を
威勢よく鞘から抜き、ふと刀身を眺める。

何か思考にふけっていたようだが、
一つ頷くとそのまま構えを取った。

魔術師

(ミオラは双剣使いか? ここらじゃ見ない得物だな…。
まぁそれ言ったら格好もそうだが)

審判が「早くしろ」と言いたげにこちらを見てくる。

魔術師は推測もほどほどに、
こちらに敵意剥き出しのチンピラに向き直った。

???

それじゃあ始―――

<筋肉質な男>
めェッ!?

魔術師

!?

何事かと思えば、
少しして筋肉ダルマが膝をつく。

どうやらそれは、開始の合図を聞いてすぐ、
真っ直ぐに大男に突っ込んでいき、
そのまま腹部へ柄を打ち据えた
ミオラによるものだった。

ミオラ

あれ?

<細身の男>
お、おい、嘘だろ!?
前線張ってるアニキが一撃って――

魔術師

(お互い動揺してるじゃねーか!
まぁここはありがたく隙を突かせてもらうが)

<小柄な男>
いでェッ!?

ミオラ

!!

魔術師の杖から放たれた稲妻は二又に分かれ、
ミオラを避けてチンピラ二人に命中した。

追撃をかけようと、
ミオラは前衛に居た男に近づいて振りかぶるも、
相手はその場から動けないようだった。

ミオラ

これは…麻痺、ですか?
無抵抗の相手を叩くのはちょっと…。

魔術師

まぁこれで十分勝敗は出てる―――

???

いーんすよ、ばばっと叩いちゃえば!
元はと言えば、向こうが吹っかけてきた喧嘩なんすし! この手合は身体でわからせてやらないと懲りないっすよ!

魔術師

なんで進んで怪我人を増やそうとしてるんだアイツ

ミオラ

確かにそれもそうですね、では遠慮なく!

<小柄な男>
ぐぎゅっ

打撃を受けると痺れも相まり、
悲鳴にならない声を上げて、
2人目のチンピラが倒れた。

そして残りの一人に視線が移る―――

<細身の男>
あ、ぁ……

ミオラ

えーと…。すみません、ね?

呂律が回らないのだろう。

瞳で必死に訴えかけた
弓師チンピラの懇願も虚しく、
一撃に倒れ伏すのだった。