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- 10話 澱める風
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2話 自称、ヤブ(3/6)
<ニィーギ平原 休憩所前>
流れで戦闘を行うことになった面々は、
平原に吹く風を受けながら自ずと対峙して配置につく。
それらを見やりながら、事を促した
胡散臭い青年が咳払いした。
…えー、それでは…
誘拐疑惑の神経魔術師! VS 義憤に燃えるチンピラ3人!
の審判を務めさせていただくっす。
<筋肉質な男>
お前もチンピラみてぇな顔してるだろうが!
…………。
(斧持ちの筋肉ダルマと、小賢しそうなナイフ使い…、そんで弓使いか。前衛と後衛のバランスが取れてるな。
やれるならさっさと弓使いを落として、残りに集中できるようにするか。)
魔術師さん!
なんだ?
私、魔術師の方とは組んだことがなくて…。
なにか注意したほうがいいことってありますか?
注意な…。やってみないことにはわかんねぇが――
(どうせ奴らはミオラじゃなくて、俺を狙ってくるだろうから)
あんたは好きに動け。
俺はそれをフォローする。
はい、わかりました!
えーと、あまり怪我はさせたくないから…
ミオラが腰に帯びていた双つの剣を
威勢よく鞘から抜き、ふと刀身を眺める。
何か思考にふけっていたようだが、
一つ頷くとそのまま構えを取った。
(ミオラは双剣使いか? ここらじゃ見ない得物だな…。
まぁそれ言ったら格好もそうだが)
審判が「早くしろ」と言いたげにこちらを見てくる。
魔術師は推測もほどほどに、
こちらに敵意剥き出しのチンピラに向き直った。
それじゃあ始―――
<筋肉質な男>
めェッ!?
!?
何事かと思えば、
少しして筋肉ダルマが膝をつく。
どうやらそれは、開始の合図を聞いてすぐ、
真っ直ぐに大男に突っ込んでいき、
そのまま腹部へ柄を打ち据えた
ミオラによるものだった。
あれ?
<細身の男>
お、おい、嘘だろ!?
前線張ってるアニキが一撃って――
(お互い動揺してるじゃねーか!
まぁここはありがたく隙を突かせてもらうが)
<小柄な男>
いでェッ!?
!!
魔術師の杖から放たれた稲妻は二又に分かれ、
ミオラを避けてチンピラ二人に命中した。
追撃をかけようと、
ミオラは前衛に居た男に近づいて振りかぶるも、
相手はその場から動けないようだった。
これは…麻痺、ですか?
無抵抗の相手を叩くのはちょっと…。
まぁこれで十分勝敗は出てる―――
いーんすよ、ばばっと叩いちゃえば!
元はと言えば、向こうが吹っかけてきた喧嘩なんすし!
この手合は身体でわからせてやらないと懲りないっすよ!
なんで進んで怪我人を増やそうとしてるんだアイツ
確かにそれもそうですね、では遠慮なく!
<小柄な男>
ぐぎゅっ
打撃を受けると痺れも相まり、
悲鳴にならない声を上げて、
2人目のチンピラが倒れた。
そして残りの一人に視線が移る―――
<細身の男>
あ、ぁ……
えーと…。すみません、ね?
呂律が回らないのだろう。
瞳で必死に訴えかけた
弓師チンピラの懇願も虚しく、
一撃に倒れ伏すのだった。