目次
神経魔術師バナー
飾り線

2話 自称、ヤブ(4/6)


<筋肉質な男>
痛ってぇ!!

???

はいはい、こんなもんで
もう大丈夫っすよ。

<筋肉質な男>
いやまだ全然 痛みが残ってるんだが

???

てなわけで、
治療費10,000Gいただきまーす。

<筋肉質な男>
人の話を聞け…って、金取んのかよ!?

???

タダなんて一言も言ってないっすよ?

魔術師

(10,000……。)

返り討ちにした三人組と
自称治療師を遠目に眺める。

中々の金額に顔をしかめながら腕を組んだ。

魔術師

あいつ等元気だな。

ミオラ

そうですね!
一撃で倒れられた時は、やり過ぎちゃったかと不安だったので…大事がなさそうでよかったです!

魔術師

お陰様で、俺は ほとんど何もしてないからな。

ミオラ

そんなことないですよ!
魔術師さんの稲妻で、あの人たちを無力化してくれたじゃないですか。すっごく助かりました!

魔術師

それをしなくても、あんたなら倒せただろって話だよ。
初手で一人落として流れ作ってたし。

ミオラ

いや、それは…どうでしょう。
私…手加減が苦手なので……。

魔術師

ミオラの反応に首を傾げていると、
自称治療師がこちらに歩いてきた。

???

いや~、見事なお手並みでしたね
お二人さん!

ミオラ

ヒーラーさん!
えーっと…何かご用ですか?
あの、私は大した怪我をしてないので、治療は大丈夫ですけど…。

魔術師

右に同じく。
あんたにやる金はねーぞ。

???

そんな邪険にしないでくださいよ~。顔を売りに来ただけっすから。
あんた達くらいの強さの冒険者とは、クルムラドでも仲良くしたいんでね。

魔術師

…………。

ミオラ

そっか…、仲間を集めるために積極的に交流するものなんですね…勉強になります!

???

その通りっすよお嬢さん!
冒険者って言ってもピンキリなんで、非力な治療師としては強い人と組めるほうがガメら―…じゃなくて、安心できるんすよ。

魔術師

(今 ガメられるって言おうとしたろ)

???

それに、冒険に出ていける治療師は貴重っすから!
治療師のスカウトに困ったら、是非声をかけてくださいっす。

ミオラ

わかりました、その時はぜひ!
えっと…

ヤブ

俺は治療師の「ヤブ」って言うっす。
以後お見知りおきを~。

ミオラ

へっ??

魔術師

自らヤブ医者を自称するなんて珍しいヤツだな。

ヤブ

いやー、なんでかわからないんすけど、行く先々でヤブ医者だのヤブヒラだの言われちゃうもんで。
だったらいっそ、最初から言っとけば胡散臭さも減るかなーと。

ミオラ

(魔術師さんといい、ここらの冒険者は名前を言いたくない人が多いのかな…??)
…はぁ。私はミオラと言います。

ヤブ

ミオラちゃんっすね。よろしくっす!
そちらのおにーさんは…

魔術師

名乗るほどの人間じゃねーので。
勝手に顔売りに来たんなら 勝手に顔覚えていけよ。

ヤブ

ありゃツレない。
まーでもツンツンのおにーさんは、"目のクマの魔術師さん"で探せそうだし大丈夫っしょ!

魔術師

あんたもクマあるだろうが!?

ヤブ

それじゃ、お疲れでしょうし俺はこれで。
縁があったらまたー。

ヤブと名乗った男は用件を伝え終えると、
軽く手を振りながら
個室のある二階へ上がって行った。

ミオラ

…変わった人でしたね?

魔術師

ナンパだろどうせ。