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- 10話 澱める風
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2話 自称、ヤブ(4/6)
<筋肉質な男>
痛ってぇ!!
はいはい、こんなもんで
もう大丈夫っすよ。
<筋肉質な男>
いやまだ全然 痛みが残ってるんだが
てなわけで、
治療費10,000Gいただきまーす。
<筋肉質な男>
人の話を聞け…って、金取んのかよ!?
タダなんて一言も言ってないっすよ?
(10,000……。)
返り討ちにした三人組と
自称治療師を遠目に眺める。
中々の金額に顔をしかめながら腕を組んだ。
あいつ等元気だな。
そうですね!
一撃で倒れられた時は、やり過ぎちゃったかと不安だったので…大事がなさそうでよかったです!
お陰様で、俺は ほとんど何もしてないからな。
そんなことないですよ!
魔術師さんの稲妻で、あの人たちを無力化してくれたじゃないですか。すっごく助かりました!
それをしなくても、あんたなら倒せただろって話だよ。
初手で一人落として流れ作ってたし。
いや、それは…どうでしょう。
私…手加減が苦手なので……。
?
ミオラの反応に首を傾げていると、
自称治療師がこちらに歩いてきた。
いや~、見事なお手並みでしたね
お二人さん!
ヒーラーさん!
えーっと…何かご用ですか?
あの、私は大した怪我をしてないので、治療は大丈夫ですけど…。
右に同じく。
あんたにやる金はねーぞ。
そんな邪険にしないでくださいよ~。顔を売りに来ただけっすから。
あんた達くらいの強さの冒険者とは、クルムラドでも仲良くしたいんでね。
…………。
そっか…、仲間を集めるために積極的に交流するものなんですね…勉強になります!
その通りっすよお嬢さん!
冒険者って言ってもピンキリなんで、非力な治療師としては強い人と組めるほうがガメら―…じゃなくて、安心できるんすよ。
(今 ガメられるって言おうとしたろ)
それに、冒険に出ていける治療師は貴重っすから!
治療師のスカウトに困ったら、是非声をかけてくださいっす。
わかりました、その時はぜひ!
えっと…
俺は治療師の「ヤブ」って言うっす。
以後お見知りおきを~。
へっ??
自らヤブ医者を自称するなんて珍しいヤツだな。
いやー、なんでかわからないんすけど、行く先々でヤブ医者だのヤブヒラだの言われちゃうもんで。
だったらいっそ、最初から言っとけば胡散臭さも減るかなーと。
(魔術師さんといい、ここらの冒険者は名前を言いたくない人が多いのかな…??)
…はぁ。私はミオラと言います。
ミオラちゃんっすね。よろしくっす!
そちらのおにーさんは…
名乗るほどの人間じゃねーので。
勝手に顔売りに来たんなら 勝手に顔覚えていけよ。
ありゃツレない。
まーでもツンツンのおにーさんは、"目のクマの魔術師さん"で探せそうだし大丈夫っしょ!
あんたもクマあるだろうが!?
それじゃ、お疲れでしょうし俺はこれで。
縁があったらまたー。
ヤブと名乗った男は用件を伝え終えると、
軽く手を振りながら
個室のある二階へ上がって行った。
…変わった人でしたね?
ナンパだろどうせ。