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5話 白き影(6/6)
…………。
…どうして
?
今、魔術師は、魔術を使えないはずだって…。
なんだそれ
あ、魔術師さん知らないんすか。
ほら、俺たちがクルムラド前でデカブツに襲われたことあったでしょ。
あの時に門番の魔術師が何もしてなかったの、魔術が使えなかったからって噂っすよ。
ビビって動けなかっただけの言い訳じゃねーの
俺もそうだと思ってるんすけどねー。
現に魔術師さんは、こうして使えてるわけっすし。
…………。
で、どうするんすか?
無力化はできたみたいっすけど、
外でミオラちゃんに見張らせたままっすし
どうするって言ってもな―――
心配しなくても、もう私達に力は残ってないですよ。
わざわざ手を下されずとも同じです。
……だってよ。
じゃーお言葉に甘えますか。
金目のものをもらえれば俺はじゅーぶんなんで。
つーわけで、俺たちはお暇するが…一つだけ 聞いていいいか。
なんでしょうか。
あんた等が今までうまくやれてたのは…、誰か協力者がいたのか。
そうですね…。
「いい餌場が在る」と、この屋敷を教えてくれた方が一人。 黒いローブの魔術師でしたが、それ以外は。
…そうか。
少女に背を向け、
ヤブとともにその場を後にする。
扉脇で待っていたミオラが
安堵から小さく笑みを浮かべた。
お二人共、無事で良かったです…!
…でも、いいんですか?
"ゴースト"は倒した、だろ。
***
<カロリーナの部屋 寝室>
キャロ様…!
ローサ…?
予想外の来客に僅かに目を見開き、
背後にやってきたメイドの姿を捉える。
しばし閉口の後、
寝台で寝息を立てるディムに視線を戻した。
あなたもあの冒険者達と一緒に出ていけばよかったのに。
大好きなこの子達の身体を奪った私達が憎いでしょう?
それは…。
あぁ、でもあなたが来てくれたのなら、身体を戴こうかしら。 あの冒険者たちのように抵抗なんてできないものね。
!!
…なんてね。私だけ生き残っても仕方ないから。
あ……。
ディムの頭を撫で続けている
カロリーナを暫く眺めていたが、
おずおずと口を開く。
…キャロ様とディム様――の、ゴーストさん、死んじゃうんですか。
えぇ。さっきの冒険者との対峙で力を使い切ってしまったから。
だからこの姉弟の肉体を弔いたいだけなら、明日の朝にでもここに来ればいいわ。
じゃあ、ここに居ます~…!
え?
その…、えっと……。
屋敷の人たち……。みんな…、みんなゴーストさんたちに食べられちゃいましたけど―――
……病気がちだったキャロ様とディム様の元気な姿を見て嬉しかったのは…、旦那様と奥様だけじゃ、ないので…。
…………。
…ローサ……。
やっぱりあなたって、ばかなのね…。