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2話 自称、ヤブ(2/6)
そういえば、魔術師さんはどんな魔法を使うんですか?
んあ。
どんなって言われてもな…。
術の範囲に入ってたり、危なそうだったら言うから気にすんなよ。
は、はぁ…。
言えるわけねぇよなぁ~?
使える魔術が陰険な神経魔術だったらよ!
!?
自然に挟まれた第三者の言葉にミオラは驚く。
声の聞こえた方へ振り向くと、
入り口に見知らぬ男3人が立っていた。
げ。
(コイツ等、森に入る前の酒場で突っかかってきた――――)
なんだよアンタ達、報復のためにわざわざ追ってきたっての?
<筋肉質な男>
おうよ! …なーんてな。
俺たちは報復なんて ちゃちなもんで動いちゃいねぇ…。
そこの嬢ちゃんを助けるためだぜ!
え??
<細身の男>
そうだぜお嬢さん。
ヒソゥは迷いの森なんて言われちゃいたけどな、あれは神経魔術師が仕組んだものだったんだよ!
!!
…………。
<小柄な男>
そいつは道案内人と組んで自演してたんだってさ。
狙った獲物は魔術で方向感覚を奪って、弱らせて、帰らぬ人にする…それがヒソゥの正体だ。
…って、怪我した道案内人がゲロった!
なるほどな。
で、その犯人が俺?
<筋肉質な男>
あぁ! 現に俺たちは、森に迷わずに追ってこれた…。
しかも見つけりゃ女を連れてると きたもんだ! 卑劣な野郎がしでかしそうなことだぜ!
<筋肉質な男>
というわけで、お前の身柄はクルムラドに引き渡させてもらう。
抵抗するなら痛い目見るぜ? もう不意打ちは喰らわねぇからな!
…あー。
(ツッコミどころも多いが、状況としては筋が通ってる。
交戦は避けられないか――――)
待った!!
!?
なんなんですか、あなた達は!!
黙って聞いていれば魔術師さんを悪者扱いして!!
魔術師さんは私を助けてくれた恩人なんです。
もし彼が犯人なら、弱らせた相手にご飯を分けたりなんてしないですよ!!
<筋肉質な男>
だ、だが、それは嬢ちゃんを油断させる罠かもしれねぇだろ
…ははっ!
男たちはミオラの勢いに気圧されていたが、
青年が吹き出すとそちらに意識が移り、じろりと睨んだ。
<筋肉質な男>
そこのお前…なに笑ってやがる!
あはっ、すいませーん。
お互い大した証拠もないのに、自信満々で言い合うのが面白くって。
証拠って…。
無いことを証明するなんてできないじゃないですか!
まぁまぁ。
でも実際、第三者から見て
その魔術師のにーさんが白か黒かハッキリしないのは事実っすよね。
それならどうっすか? ここはいっそ、喧嘩でケリつけるのは。
真実なんて誰もわからないんすから、暴れたほうがすっきりするっしょ。
俺ってこう見えて治療師なんで、おたくらが怪我しても治してあげられるっすから!
(コイツ…。)
んなメチャクチャな話、付き合うわけねぇ――――
いいでしょう!
は???
私はあなた達三人がかりでも負けるつもりはありませんから!
二人なら大丈夫ですよ、魔術師さん!
<筋肉質な男>
こンの、純真な嬢ちゃんをたぶらかしやがって…。
絶対ボコボコにしてやるからな!
……はぁ~~。
自分を渦中の中心に据えられた挙げ句、
周囲が勝手に熱くなっている。
魔術師は状況に心底嘆息しながら頭を掻き、
杖を持って立ち上がった。
わざわざ濡れ衣着て捕まってやるわけにもいかねぇからな。
表に出ろよ、野郎ども。