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2話 自称、ヤブ(2/6)


ミオラ

そういえば、魔術師さんはどんな魔法を使うんですか?

魔術師

んあ。

魔術師

どんなって言われてもな…。
術の範囲に入ってたり、危なそうだったら言うから気にすんなよ。

ミオラ

は、はぁ…。

言えるわけねぇよなぁ~?
使える魔術が陰険な神経魔術だったらよ!

ミオラ

!?

自然に挟まれた第三者の言葉にミオラは驚く。

声の聞こえた方へ振り向くと、
入り口に見知らぬ男3人が立っていた。

魔術師

げ。
(コイツ等、森に入る前の酒場で突っかかってきた――――)

なんだよアンタ達、報復のためにわざわざ追ってきたっての?

<筋肉質な男>
おうよ! …なーんてな。
俺たちは報復なんて ちゃちなもんで動いちゃいねぇ…。 そこの嬢ちゃんを助けるためだぜ!

ミオラ

え??

<細身の男>
そうだぜお嬢さん。
ヒソゥは迷いの森なんて言われちゃいたけどな、あれは神経魔術師が仕組んだものだったんだよ!

ミオラ

!!

魔術師

…………。

<小柄な男>
そいつは道案内人と組んで自演してたんだってさ。
狙った獲物は魔術で方向感覚を奪って、弱らせて、帰らぬ人にする…それがヒソゥの正体だ。
…って、怪我した道案内人がゲロった!

魔術師

なるほどな。
で、その犯人が俺?

<筋肉質な男>
あぁ! 現に俺たちは、森に迷わずに追ってこれた…。
しかも見つけりゃ女を連れてると きたもんだ! 卑劣な野郎がしでかしそうなことだぜ!

<筋肉質な男>
というわけで、お前の身柄はクルムラドに引き渡させてもらう。
抵抗するなら痛い目見るぜ? もう不意打ちは喰らわねぇからな!

魔術師

…あー。

魔術師

(ツッコミどころも多いが、状況としては筋が通ってる。
交戦は避けられないか――――)

ミオラ

待った!!

魔術師

!?

ミオラ

なんなんですか、あなた達は!!
黙って聞いていれば魔術師さんを悪者扱いして!!

ミオラ

魔術師さんは私を助けてくれた恩人なんです。
もし彼が犯人なら、弱らせた相手にご飯を分けたりなんてしないですよ!!

<筋肉質な男>
だ、だが、それは嬢ちゃんを油断させる罠かもしれねぇだろ

???

…ははっ!

男たちはミオラの勢いに気圧されていたが、
青年が吹き出すとそちらに意識が移り、じろりと睨んだ。

<筋肉質な男>
そこのお前…なに笑ってやがる!

???

あはっ、すいませーん。
お互い大した証拠もないのに、自信満々で言い合うのが面白くって。

ミオラ

証拠って…。
無いことを証明するなんてできないじゃないですか!

???

まぁまぁ。
でも実際、第三者から見て その魔術師のにーさんが白か黒かハッキリしないのは事実っすよね。

???

それならどうっすか? ここはいっそ、喧嘩でケリつけるのは。
真実なんて誰もわからないんすから、暴れたほうがすっきりするっしょ。
俺ってこう見えて治療師ヒーラーなんで、おたくらが怪我しても治してあげられるっすから!

魔術師

(コイツ…。)
んなメチャクチャな話、付き合うわけねぇ――――

ミオラ

いいでしょう!

魔術師

は???

ミオラ

私はあなた達三人がかりでも負けるつもりはありませんから!
二人なら大丈夫ですよ、魔術師さん!

<筋肉質な男>
こンの、純真な嬢ちゃんをたぶらかしやがって…。
絶対ボコボコにしてやるからな!

魔術師

……はぁ~~。

自分を渦中の中心に据えられた挙げ句、
周囲が勝手に熱くなっている。

魔術師は状況に心底嘆息しながら頭を掻き、
杖を持って立ち上がった。

魔術師

わざわざ濡れ衣着て捕まってやるわけにもいかねぇからな。
表に出ろよ、野郎ども。