目次
神経魔術師バナー
飾り線

8話 邂逅(4/--)


ストリィ

それで、アタシの手伝いの話なんだけど……

ストリィ

アンタたちには、ヒソゥの集落周辺に潜んでる吸血鬼を倒すのに力を貸してほしいの。

ミオラ

ヒソゥの集落、って…。
騎士さんも言っていましたけど、私がストリィさんと初めてお会いしたところですか?

ストリィ

その通りよ。
あれもずいぶん前の事に感じるわね…。

ヤブ

えっ。 あれてっきり イェレさんが道案内人に送ったシャドウが暴れたせいかと思ってたんすけど

イェレ

とんだ誤解だな。

イェレ

俺は血を得ること、そしてそれを邪魔する要素の排除以外に興味はない。
未来の食糧になるかもしれない人間を殺めることに何のメリットがあるんだ?

魔術師

あんたも言ってること大概だけどな

魔術師

だが、なんで集落を襲った正体が吸血鬼だとわかってるんだ?
確かに騎士のやつらは、そこを明らかにしちゃいなかったが。

イェレ

俺が商売を兼ねて道案内人の状態確認をしに足を運んだら、ちょうどその事件が発生した後だったからだな。

魔術師

イェレ

道案内人以外にも、多数の人間がシャドウとは別の…爪らしき裂傷を負い、血を失って死んでいた。
あの干からびようは吸血鬼…もしくはそれに準ずる特徴を持った何かによるものだろう。

ヤブ

そこは言い切らないでぼかすんすね

イェレ

同族やアンデッドならまだしも、俺も「魔獣」なんてものは初耳だからな。
正体をこの目で見ていない以上は断言できない。

ストリィ

まぁそんなわけで…すぐに助力してほしいわけじゃないわ。
吸血鬼が集落に常駐してるとは考えづらいし、いろいろ情報も足りてない。

ストリィ

ただ、準備ができたら声かけるから、その時はちゃんと力貸しなさいよってハナシ。

ストリィは懐から掌に包める程大きさの
丸みの帯びた水晶をテーブルに置き、
そのまま魔術師に向けて差し出した。

魔術師

…………。

ミオラ


綺麗な石、ですね…?

ストリィ

? 何よその反応…。
アンタら仮にもパーティー組んでるんでしょ?
呼石よびいし』くらい使ってるんじゃ

ヤブ

それが使ってないんすよね~

ストリィ

はぁ~!?
なんで持ってないのよ、魔術師いるなら手っ取り早い連絡手段でしょ!?

魔術師

うるせぇな、色々あってタイミング逃してたんだよ!

ストリィ

じゃあいい機会ね、作りなさいよ今!
石がないならあげるから!

ストリィ

イェレが。

イェレ

そうなのか?

イェレ

確かに在庫もある。
詫びの品としてはちょうどいいだろう。

脇に置いていたリュックを探り、
中から紐で縛られた黒布の小包を取り出す。

テーブルの真ん中に置いてから封を解くと、
形が不揃いな水晶が数個 姿を現した。

魔術師

! これ…

ヤブ

このクオーツ 濁り少ないっすね!?
こんないいヤツ、ほんとにタダで??

イェレ

俺たちの呼石よびいしも網に加えるなら、伝播領域が広い方が都合がいいからな。 遠慮は要らない。

イェレ

魔力込めもサービスできるが…お前たちは今後を考えるなら、そこの魔術師がやる方がいいだろう。

魔術師

あ、あぁ。そうだな。

イェレが開いた水晶から三個、
そしてストリィが差し出した計四個の水晶を
自分の方へと寄せる。

内一つを手に取ると、
目を閉じて集中し、魔力を込め始めた。

ミオラ

…………。

ミオラ

あの…、イェレさんでしたっけ。
よびいし?についてお伺いしても?

イェレ

? 呼石よびいしを知らないのか。
今時珍しいな。

イェレ

これは同じ魔力を持つもの同士で呼応する。
同一の波長を共有して伝播させる性質を持った鉱石だ。

ミオラ

え、えっと…?

ストリィ

んな深い説明は求めてないでしょ!
ようは魔術師の魔力が込められた呼石をアンタたち三人で持てば、それを通じて意志疎通が取れるようになるのよ。 こんな風にね。

ストリィ

ここの飯代もアンタ持ちでいいわよね。

イェレ

ん。

ミオラ

ストリィは魔術師に差し出したものとは
異なる水晶を懐から新たに取り出し、
口許に近づけて言葉を発する。

すると その音声が少し遅れて
イェレの方から聞こえてきた。

イェレ

そうだったのか。別に構わないが。

ストリィ

そこはアンタも呼石よびいし使って返事しなさいよ…。

ミオラ

いえ、大丈夫です!
今ので十分伝わりましたから…!