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7話 壊れ、移ろう(3/6)


おい、騎士の奴ら行っちまったぞ!
魔術が使えないってマジなのか!?

ぼ、ぼくはまだ使えてるけど…

でも、依頼先で魔術が使えなくって、命からがら帰ってきたってパーティーを前見かけたぜ俺

ストリィ

…………。

魔術無しで獣を相手にするのも考えられねぇのに、魔獣なんて言われたら―――

ストリィ

……は~~~~~

不安を口々にする冒険者たちに
ストリィは長い溜息をつく。

未だに輪の形が残ったままの
人集りの中心に向かって、
つかつかと歩みを進めた。

ミオラ

ストリィさん…?

ストリィ

あのねぇ…

ストリィ

なーにが『魔獣』よ!

!!

ストリィ

日和ってる冒険者は知らないでしょーけど、そんなのが出てくる前から 死霊を操る神経魔術師がアンデッドを生み出すわ 吸血鬼が影で人間様に危害を加えるわで好き放題してんのよ。
多少増えても変わらないわ!

ストリィ

魔術が使えないからって何?
ここで怖気づくならいい機会ね! 冒険者向いてないわ!

アタシたちは"危険を冒す者"なのよ?
さっさとやめて、魔術書転写師にでもなんでもなればいい。

ストリィ

ただ…、魔獣を相手にしてる間に『吸血鬼』と接触したのなら…。尻尾巻いて逃げてアタシのところに来なさい。
この吸血鬼狩人ハンターのストリィ様が、銀の弾丸をブチ込んでそいつを滅ぼしてやるわ。

…………。

ミオラ

…………。

ストリィの高らかな激により、
冒険者たちは毒気を抜かれるやら
さらに困惑するやらで散り散りになる。

ギルドの人気ひとけは自然と落ち着いていった…。

ストリィ

やれやれ、日和ってる連中には頭がパンクする話だったみたいね…。

ミオラ

……あ、あの!

ストリィ

何よアンタまだ居たの?

ミオラ

ストリィさん…、あなたは『吸血鬼』に詳しいんですか!?

***

<クルムラド 冒険者ギルド 一角にて>

魔術師

…………。

ヤブ

ひゅー。

ミオラ

というわけで、こちら吸血鬼狩人ハンターのストリィさんです。

ヤブ

存じてるっすよ。
さっき俺たちも彼女の啖呵聞いてましたもん。

ストリィ

…"吸血鬼関連で仲間が困ってる"って言うから来てみれば、あんたの仲間ってこんなクマ野郎どもなの?!
森で助けてくれたって奴はどこ行ったのよ。

ミオラ

それは―――

魔術師

それ俺だな

ストリィ

はぁ~~??
あんたどう見たって神経魔術師じゃない。 助けた側じゃなくて仕掛けた側なんじゃないの!?

魔術師

またこの流れかよ…。

ミオラ

(そんなに魔術師さんって信用なさそうに見えるんでしょうか…。)

ヤブ

("それ俺っすね"って流れで言いたい所っすけど、この人相手に言うとマジで面倒そうっすね)

ストリィ

まぁいいわ。
アタシは名を言ったんだから、アンタ達も名乗りなさい。 話はそれからよ。

魔術師

魔術師だ。

ヤブ

ヤブっす。

ストリィ

は??

ストリィ

……名乗れと言って、堂々と偽名で返されるとはね。
アタシも舐められたもんだわ。

魔術師

あいにく俺は名乗るほどの者じゃないんでな。呼び名がわかればそれでいいだろ。
ユリシーズさんは別に名乗ってもいいんじゃねーの

ヤブ

いやあれも普通に他人の名前なんで あんまそっちで呼ばないでほしいっす

魔術師

やっぱあれ偽装免許証ライセンスかよ…。

ストリィ

なんなのコイツら!!?

ミオラ

私に言われても…!?