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7話 壊れ、移ろう(2/6)
<クルムラド 冒険者ギルド>
はぁ? 何してるかわからないけど見に来てる?
じゃあ、さっさとそこを退きなさいよ!
ったく、ただの野次馬がストリィ様の行く手を塞ぐんじゃな――
…………。
…って、アンタはたしか…ミオラ?
! ストリィさん!
アンタも考えなしに行列に並ぶタイプの冒険者?
この人集りに加担してるなら容赦しないわよ
い、いえ、なんでも騎士団から「御触れ」があるとかで…
「御触れ」?
何なんだろうな、告げ人も使わないで騎士団が直接知らせるようなことって…
もしかして、街にバケモノが出たって話とか? アレって本当だったの?
…………。
意識して会話に耳を傾けていると、
周囲が一層ざわめき始める。
輪の中心に居た騎士のもとに、
新たに鎧を纏った人影が2つ
加わったからだった。
(あれ。あの人、どこかで見たような)
静粛に!
これより冒険者諸君に、警戒令および討伐要請を通達する!
!!
我々騎士団がこの場に足を運んだのは、 公国より発令された『魔獣の変』の詳細を伝えるためだ。
まじゅー?
現在、クルムラド周辺を始めとしたドルーレンヅには、
今まで見聞きしたことのない生物…異形としか形容しようのない脅威が多数報告されている。
この異形たちは、空想上の生物である『魔物』と似た性質が見られることから、『魔獣』と呼称することになった。
魔獣……。
当惑した雰囲気が漂う中、
此処数日で相対した異形を思い返しながら、
ミオラはその名称を自然と独り言つ。
場の空気に構わず、
騎士たちは言葉を続ける。
魔獣は黄金の瞳を持つ、非常に獰猛な異形だ。
中でもクルムラドに一度肉薄した「ベヒモス」は、体躯も力も、野生の獣を遥かに凌駕している。
我々騎士団でも手を焼いている状況だ。
よって…ベヒモスの首には、金貨50枚の賞金が懸けられることになった。
金貨!?
50枚だって!?
ウソ…一生遊んで暮らせるじゃん!
冒険者が一日で得られる報酬は、
G換算で大体1,000、
よくて2,000Gといったところだ。
そして金貨50枚は、
5,000,000Gに相当する。
場に居る冒険者たちが
色めき立たない理由がなかったが…。
…………。
(あの兵士の表情を見るに、今日までの交戦でそこそこ兵力を失ってそうね。
やれるもんならやってみろってところかしら。)
ベヒモスに限らず、人に襲いかかる植物や霊…など、既に複数の魔獣の姿と、それによる被害、死亡報告がされている。
現に先日、ヒソゥの最寄り村落にいた半数が命を失った。
その中には、騎士の姿もある。
(ヒソゥの…って、もしかして、私がストリィさんと初めてお会いしたところじゃ…?)
諸君が依頼をこなす際にも、魔獣が現れる可能性は高いだろう。
加えて…魔術が使えない可能性もある。警戒を怠らないように。
!!
それでは、健闘を期待する。
近場の集落の被害に加え、
噂になっていた"魔術不能"を匂わす言葉。
不安の色が強くなった冒険者たちをよそに、
騎士たちはギルド中央の掲示板に
公示を貼り付けると、その場を後にした…。