- 0話 或る魔術師
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- 6話 影の支配者
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- 10話 澱める風
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6話 影の支配者(4/6)
…………。
話聞こえてますよね?
ゴーストやデカブツを追い払ったように、この『影』を無力化…あるいは始末してほしいっす。
さっさと承諾してくれれば、俺も治療が開始できてありがたいんすけど。
(コイツ……。)
傷口から流れていく血潮は、
床に溜まって淀むこともなく、
影に奪われ、流れていく。
相手の態度に思うところはあるが、
このまま血を流し続けて
助かる見込みがないのも事実だった。
*一つ頷く*
え!?
ご協力感謝するっす
魔術師から協力の意思を見て取ると、
ヤブは肋骨から脇腹にかけて
一文字にばっくりと割れた傷へ手をかざす。
手の先から淡い光が放たれ、
そこから徐々に傷が塞がり始めた…。
なっ…、本気ですか魔術師さん!
ヤブさんは助けるって言ってますけど、
仕掛けてきたのもヤブさんで……。
こんなのただの脅迫じゃないですか!!
いやいや、あくまで仕掛けたのは俺に憑いてる『影』で、俺の意思じゃないっすから。
そんなの詭弁です…!
まー、ミオラちゃんの言うことはごもっともっすけどね。
とりあえず今は治癒に集中させてあげましょうよ。
う…。
(意図された、自作自演の"痛み"…。
ヤブも立派に神経魔術師だな、
懐かしさすら覚える…)
(…だめだ、頭が―――)
肉体の物理的な損傷に加えて、
対ゴーストでの消耗もあった。
傷口に群がる名状しがたい感覚から逃れるように、
魔術師は意識を手放した……。