目次
神経魔術師バナー
飾り線

6話 影の支配者(4/6)


魔術師

…………。

ヤブ

話聞こえてますよね?

ヤブ

ゴーストやデカブツを追い払ったように、この『影』を無力化…あるいは始末してほしいっす。
さっさと承諾してくれれば、俺も治療が開始できてありがたいんすけど。

魔術師

(コイツ……。)

傷口から流れていく血潮は、
床に溜まって淀むこともなく、
何かに奪われ、流れていく。

相手の態度に思うところはあるが、
このまま血を流し続けて
助かる見込みがないのも事実だった。

魔術師

*一つ頷く*

ミオラ

え!?

ヤブ

ご協力感謝するっす

魔術師から協力の意思を見て取ると、
ヤブは肋骨から脇腹にかけて
一文字にばっくりと割れた傷へ手をかざす。

手の先から淡い光が放たれ、
そこから徐々に傷が塞がり始めた…。

ミオラ

なっ…、本気ですか魔術師さん!

ミオラ

ヤブさんは助けるって言ってますけど、 仕掛けてきたのもヤブさんで……。
こんなのただの脅迫じゃないですか!!

ヤブ

いやいや、あくまで仕掛けたのは俺に憑いてる『影』で、俺の意思じゃないっすから。

ミオラ

そんなの詭弁です…!

ヤブ

まー、ミオラちゃんの言うことはごもっともっすけどね。
とりあえず今は治癒に集中させてあげましょうよ。

ミオラ

う…。

魔術師

(意図された、自作自演マッチポンプの"痛み"…。
ヤブも立派に神経魔術師だな、 懐かしさすら覚える…)

魔術師

(…だめだ、頭が―――)

肉体の物理的な損傷に加えて、
対ゴーストでの消耗もあった。

傷口に群がる名状しがたい感覚から逃れるように、
魔術師は意識を手放した……。