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3話 異端の獣(1/5)


ヤブ

それで、魔術師さんは何しにクルムラドに?

魔術師

わざわざ言うほどの事じゃねーよ

ヤブ

なら尚更 言っていいっしょ、大したことないわけですし!

魔術師

コイツ…

ミオラ

…………。

ミオラ

…ご歓談中のところすみません、
あの……何か聞こえませんか?

魔術師

? 何かって なんだよ

周囲を見渡してみるが、
見晴らしのいい平原が広がるばかりで、
変わったものは見られない――――

ヤブ

俺も聞こえないっすねー

ミオラ

蹄が、地を蹴るような…、
馬…? いや、でもそれだけじゃ

ヤブ

馬ならクルムラド行きの定期便とか?
…にしても、通るには早い時間な気が。 ちなみに音ってどの辺から

ミオラ

あっちの――――

魔術師

!!

ミオラが森林地帯を指さした瞬間だった。

三頭の騎馬に加え、その背後に一際大きい影が、
木々についた葉を散らしながら平原に躍り出た!

赤髪の騎士

門まで逃げ切れるか!?

青髪の騎士

駄目だ、追いつかれる…!

馬に騎乗した騎士らしき面々は、
表情を強張らせて一心不乱に鞭を打つ。

魔術師一行と同じ方角、
こちらに向かって馬を走らせている――――

ヤブ

なん……っすか、
あの後ろのデカい熊!じゃない…犬?!
あんなん見たことな――――

ミオラ

助けないと!

ヤブ

魔術師

まぁ 止めた方が良いだろうな

ヤブ

はっ……
*ミオラと魔術師が各々得物を構えるのを、信じられないとばかりに幾度か交互に見やって*

ちょ…アレ相手にするとか マジっすか!?

魔術師

ここで足止めしなかったら、アレが街の中に来るだけだろーが!
とにかく目ぇ瞑っとけ!

魔術師は杖を前方に構え、
騎士たちと背後の獣を見据えて集中する。

それらの影が近づき、
自らを通り過ぎた瞬間――――

魔術師

(ココだろ!)

<四ツ足の獣>
!?

目を閉じながら杖を掲げると、
杖先に生成していた光球が弾け、
一際強い光が一帯に放たれる。

光を背に受けて走り抜けた騎士たちとは対照的に、
視界の――それも眼前に閃光を受けた獣は、
堪らず街道脇に転げていった。

ミオラ

はぁッ!!

ミオラは隙を突くべく、
動きの鈍い獣にすかさず向かっていく。

分離させて二振りとなった刀身を振り降ろすも、
右脚を浅く斬り込むまでにとどまった。

ミオラ

っ、固い…、でも………!!

魔術師

欲出すな、下がれ!

ミオラ

!!

攻撃を続けようと構えていたところで、
呼びかけと同時に獣の爪が繰り出され、
地を蹴って躱した。

ミオラ

助かりました…

魔術師

別に。それよか退くぞ。

ミオラ

えっ

魔術師

二人じゃ手数足りねぇだろ!

ミオラ

二人…?

ミオラ

(…って、ヤブさん居なくなってる!!)

走り出した魔術師の後にミオラも続き、
視界にそびえる都市の門を目指す。

獣が放つ殺気を背に受けながら―――