3話 異端の獣(1/5)
それで、魔術師さんは何しにクルムラドに?
わざわざ言うほどの事じゃねーよ
なら尚更 言っていいっしょ、大したことないわけですし!
コイツ…
…………。
…ご歓談中のところすみません、
あの……何か聞こえませんか?
? 何かって なんだよ
周囲を見渡してみるが、
見晴らしのいい平原が広がるばかりで、
変わったものは見られない――――
俺も聞こえないっすねー
蹄が、地を蹴るような…、
馬…? いや、でもそれだけじゃ
馬ならクルムラド行きの定期便とか?
…にしても、通るには早い時間な気が。
ちなみに音ってどの辺から
あっちの――――
!!
ミオラが森林地帯を指さした瞬間だった。
三頭の騎馬に加え、その背後に一際大きい影が、
木々についた葉を散らしながら平原に躍り出た!
門まで逃げ切れるか!?
駄目だ、追いつかれる…!
馬に騎乗した騎士らしき面々は、
表情を強張らせて一心不乱に鞭を打つ。
魔術師一行と同じ方角、
こちらに向かって馬を走らせている――――
なん……っすか、
あの後ろのデカい熊!じゃない…犬?!
あんなん見たことな――――
助けないと!
え
まぁ 止めた方が良いだろうな
はっ……
*ミオラと魔術師が各々得物を構えるのを、信じられないとばかりに幾度か交互に見やって*
ちょ…アレ相手にするとか マジっすか!?
ここで足止めしなかったら、アレが街の中に来るだけだろーが!
とにかく目ぇ瞑っとけ!
魔術師は杖を前方に構え、
騎士たちと背後の獣を見据えて集中する。
それらの影が近づき、
自らを通り過ぎた瞬間――――
(ココだろ!)
<四ツ足の獣>
!?
目を閉じながら杖を掲げると、
杖先に生成していた光球が弾け、
一際強い光が一帯に放たれる。
光を背に受けて走り抜けた騎士たちとは対照的に、
視界の――それも眼前に閃光を受けた獣は、
堪らず街道脇に転げていった。
はぁッ!!
ミオラは隙を突くべく、
動きの鈍い獣にすかさず向かっていく。
分離させて二振りとなった刀身を振り降ろすも、
右脚を浅く斬り込むまでにとどまった。
っ、固い…、でも………!!
欲出すな、下がれ!
!!
攻撃を続けようと構えていたところで、
呼びかけと同時に獣の爪が繰り出され、
地を蹴って躱した。
助かりました…
別に。それよか退くぞ。
えっ
二人じゃ手数足りねぇだろ!
二人…?
(…って、ヤブさん居なくなってる!!)
走り出した魔術師の後にミオラも続き、
視界にそびえる都市の門を目指す。
獣が放つ殺気を背に受けながら―――。