3話 異端の獣(5/5)
…………。
視線の先で、
幼い子どもたちが焼き菓子に群がっている。
めいめいそれを手に取って口に運ぶと、
顔をほころばせていた。
<????>
なんだ、また食ってねぇのか?
遠慮することねェ、●●●も試験通ったんだろ?
別にそこまで欲しいわけじゃねぇし…。
他に欲しがってる奴がいるなら尚更だろ。
<????>
殊勝だねェ。
<????>
ま、ほんとにお前サンに欲がないだけならそれもいいさ。
だが、人生の先輩として言わせてもらうとだなァ
欲しいモンは、
手を伸ばさねぇ限り 届かないんだぜ―――
…………。
窓から日が差し込み、
明るく照らされた個室で目が覚める。
覚醒しきらない頭のまま、
今が現実であることを理解するために、
天井に向かって手を伸ばした。
欲しいもの、か。
<クルムラド 冒険者ギルド本部>
…………。
魔術師さん、来るでしょうか……。
十中八九、ここに依頼を取りにくるっすよ!
あの人、クルムラドに来て すぐ他へ発てるほど
お金がありそうには見えなかったっすし。
い、一体どの辺りでお金が無さそうだと…?
勘っすね。
手持ちに余裕あったらあんないつも仏頂面してないっしょ。
朝から適当なこと抜かしてるな。
!!
魔術師さん!
昨日はソロ専だって言って、アンタ等の要求を蹴ったが…。 気が変わってなけりゃ暫くツルまねぇか。
そりゃありがたいっすけど、どーゆー風の吹き回しっすか?
…昨日の化けモンだよ。
あんなのがうろついてるって状況じゃ、ソロの方が面倒だって気づいただけだ。
なーるほど。
つまりあーゆーヤバいのがうろついてない限り、
おたくは一人で何とかできる自信があるってことっすね!
お前はいちいち
"頼もしい"って言ってるんすよ?
…ふふっ。
(よかった。
昨日がお別れにならなくて―――)
根無し草や冒険者の命は軽い。
そうでなくとも機会が合わず、
そのまま別れとなることも珍しくない。
ミオラはひっそりと巡り合わせに感謝した。
…また魔術師さんと組めて嬉しいです。
改めてよろしくお願いします、魔術師さん、ヤブさん!