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3話 異端の獣(5/5)


魔術師

…………。

視線の先で、
幼い子どもたちが焼き菓子に群がっている。
めいめいそれを手に取って口に運ぶと、
顔をほころばせていた。

<????>
なんだ、また食ってねぇのか?
遠慮することねェ、●●●も試験通ったんだろ?

魔術師

別にそこまで欲しいわけじゃねぇし…。
他に欲しがってる奴がいるなら尚更だろ。

<????>
殊勝だねェ。

<????>
ま、ほんとにお前サンに欲がないだけならそれもいいさ。
だが、人生の先輩として言わせてもらうとだなァ

欲しいモンは、
手を伸ばさねぇ限り 届かないんだぜ―――

魔術師

…………。

窓から日が差し込み、
明るく照らされた個室で目が覚める。

覚醒しきらない頭のまま、
今が現実であることを理解するために、
天井に向かって手を伸ばした。

魔術師

欲しいもの、か。

線

<クルムラド 冒険者ギルド本部>

ミオラ

…………。

ミオラ

魔術師さん、来るでしょうか……。

ヤブ

十中八九、ここに依頼を取りにくるっすよ!
あの人、クルムラドに来て すぐ他へ発てるほど お金がありそうには見えなかったっすし。

ミオラ

い、一体どの辺りでお金が無さそうだと…?

ヤブ

っすね。
手持ちに余裕あったらあんないつも仏頂面してないっしょ。

魔術師

朝から適当なこと抜かしてるな。

ヤブ

!!

ミオラ

魔術師さん!

魔術師

昨日はソロ専だって言って、アンタ等の要求を蹴ったが…。 気が変わってなけりゃ暫くツルまねぇか。

ヤブ

そりゃありがたいっすけど、どーゆー風の吹き回しっすか?

魔術師

…昨日の化けモンだよ。
あんなのがうろついてるって状況じゃ、ソロの方が面倒だって気づいただけだ。

ヤブ

なーるほど。
つまりあーゆーヤバいのがうろついてない限り、 おたくは一人で何とかできる自信があるってことっすね!

魔術師

お前はいちいち揶揄やゆらねーと死ぬ生き物なのか???

ヤブ

"頼もしい"って言ってるんすよ?

ミオラ

…ふふっ。

ミオラ

(よかった。
昨日がお別れにならなくて―――)

根無し草や冒険者の命は軽い。

そうでなくとも機会が合わず、
そのまま別れとなることも珍しくない。

ミオラはひっそりと巡り合わせに感謝した。

ミオラ

…また魔術師さんと組めて嬉しいです。
改めてよろしくお願いします、魔術師さん、ヤブさん!