- 0話 或る魔術師
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- 10話 澱める風
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6話 影の支配者(5/6)
<いつかの出来事 ヒソゥの森>
えーと、ココらで待ち合わせだったっすよね―――
<道案内人の男>
ひ、ひぃいいッ…!!
ん?
待ち合わせの場所まで歩いていると、
恐怖を顔面に貼り付けた男が
千鳥足になりながら走り去っていった。
(なんかだいぶ血ぃ流してたっすけど、もしかして―――)
お前か。遅かったな。
イェレさん。
あの道案内人の『血』、奪っちゃったんすか?
あぁ。ここ数日、禄に血を得られていなかったからな。
むしゃくしゃしてやった。
(ですよねー、ちょっと遅く来てよかった~!)
でも良かったんすか、生かして返しちゃって。
これじゃますますこの森に
人が寄り付かなくなっちゃいません?
あの男は狩人を呼び寄せるための餌だ。
役目を果たせば、自ずと退場するだろう。
……。
こうして言葉を交わしている間にも、
表情を禄に動かさないイェレとは対照的に、
彼の足元の『影』はある一帯に集まり、
異様に蠢いている。
地面に残る血痕から推測するに、
先程の男が負傷した現場なのだろう。
(死骸に群がる蟻みたいっすね)
なるほど。
それで、アレの方は…
『治療師資格証』か。
拝借してきたぞ。
パーティー単位で仕留めたという話だったから、ギルドへの死亡報告もまだだろう。
暫く保つんじゃないか。
おー、それはいいっすね!
言い値で買わせていただくっす
50,000Gだ。
わーお…。
まぁ妥当っすかね。ではありがたく。
ヤブ。
はい。
次に会うまでに『一人』。
必ず用意しろ。わかっているな。
もちろん!
イェレさんとはこれからも末永く、お付き合い願いたいんで。
…………。
首肯してヤブの言葉に応えると、
緑のフードの青年は、
そのまま静かに森の奥へと姿を消した。
…………。
ふぃー、おっかねぇー。
気配が無くなったことを悟ると、
膝を立てながら地べたに腰を下ろした。
あの人 鉄仮面だからわかりづらいっすけど、今回機嫌悪かったよなー。
というか、さっきのでなんか術かけられた気がするっすし。
無傷なだけマシ、か…。
でも一人で捕獲も大変なんすよね~。
疲れるっすけど、ここらに幻影を敷くしかないかー……。
ぼやきながら算段を立てる。
果たして道案内人もなしに、
既に物騒な噂が立っている
この森を通る人間は いるのだろうか。
答えは神のみぞ知る
幻影を映す術式を組み上げながら、
信じてもいない存在に祈る他なかった。