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10話 澱める風(5/6)
<夕刻 農村ヘルドマ近郊>
!!
あそこに見えるの…冒険者たちじゃないか?
そのようですね…! みなさん、よくご無事で!
ふお? 出むかえご苦労~?
洞窟の暗がりから出て、
夕日の紅い光線に目をすぼめながら
歩いていた最中だった。
もうすぐ村の入り口に差し掛かるというところで、
村で顔を合わせた二人に出迎えられ、
小首を傾げながら魔術師は口を開く。
あんたらが顔揃えて迎えるってことは、こっちで何かあったのか
あぁ。ずっと乾きっぱなしだった水路に…少し前から、わずかに水が戻ってきたんだ。
だから、あんたらがうまいことやったんだろうってさ。
うまいこと…と言っても、話していたお二人は、残念ですが……。
いえ、調査にでた二名については…覚悟ができていましたから。
こうしてミオラ殿とみなさんが事態を収束させたことで、殉じた仲間も浮かばれる思いでしょう。
えー、そんなわけで俺たちは村を救った英雄だと思うんすけど、お風呂を貸してくれたりとかは
!! 女性もいるのに…気が回らず失礼しました。
冒険者殿の身の回りの世話は…すまないが、君に任せていいかい?
あー…、いいよ。丁度手が空いたとこだし。
村の連中も大喜びだし、頼まなくても食い物持って顔見にくると思うぜ。
そんな広いとこでもないけど、のんびりすればいい。
<通りすがりの女性>
坊主のとこじゃこれから湯を沸かすんだろう、それじゃ体が冷えるじゃないのさ。
嬢ちゃんたちはウチに来な!
やった~! おふろ入れる~!
あ、ありがとうございます!
渡りに船だな。あの世話焼きおばさんのとこなら大丈夫だろ。 じゃあ おたくらは着いてきてもらって
お世話になりまーす
…………。
<農村ヘルドマ 村人の家屋の一室>
生き返った~!
風呂って言っても簡素なものかと構えてたっすけど、
まさか露天の樽風呂キメられるとは!
流石はクルムラドを支えてる農村ってところっすね
ミオラちゃん達もいたらよかったのにな~
魔術師さんもそう思いません?
そんだけ元気なら 助けた側としちゃ言うことねぇよ
そういや魔術師さんって、どうやって俺を助けたんすか?
いつもの電撃じゃ俺も逝っちゃいますし―――
…あ。
もしかして血ぃ使いました?
あぁ。
血の変成魔術なんて最近使ってなかったから賭けだったけどな。
なるほど。
道理で派手に腕切ってたワケっすね。
でもそっちも扱えるなんて流石というか…。
伊達に神経魔術師をやってないっすね、おたく
神経魔術師なら必ず通る術だろ。
というか、理解ある辺りお前も同類だよな
そりゃ治療師も、分類で言ってしまえば神経魔術師っすからねー。
…とまぁ、魔術師さんへの溢れる感謝もそこそこにして、あの村人Aくんに話を聞きに行きますか。
? 今聞くのか?
今となっちゃ依頼には関係なさそうだし、明日でいいと思ってたんだが
お互いあの包帯見て、吸血鬼の線を想像したわけっすし、スライムに後れを取った一因っすよ?
ストリィさんたちの話もありますし、軽く情報拾っておくのは悪くないでしょ。
それに…個人的に気になることがあるもんで。