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10話 澱める風(5/6)


<夕刻 農村ヘルドマ近郊>

村人

!!
あそこに見えるの…冒険者たちじゃないか?

シルルド

そのようですね…! みなさん、よくご無事で!

えるふ

ふお? 出むかえご苦労~?

洞窟の暗がりから出て、
夕日の紅い光線に目をすぼめながら
歩いていた最中だった。

もうすぐ村の入り口に差し掛かるというところで、
村で顔を合わせた二人に出迎えられ、
小首を傾げながら魔術師は口を開く。

魔術師

あんたらが顔揃えて迎えるってことは、こっちで何かあったのか

村人

あぁ。ずっと乾きっぱなしだった水路に…少し前から、わずかに水が戻ってきたんだ。
だから、あんたらがうまいことやったんだろうってさ。

ミオラ

うまいこと…と言っても、話していたお二人は、残念ですが……。

シルルド

いえ、調査にでた二名については…覚悟ができていましたから。
こうしてミオラ殿とみなさんが事態を収束させたことで、殉じた仲間も浮かばれる思いでしょう。

ヤブ

えー、そんなわけで俺たちは村を救った英雄だと思うんすけど、お風呂を貸してくれたりとかは

シルルド

!! 女性もいるのに…気が回らず失礼しました。
冒険者殿の身の回りの世話は…すまないが、君に任せていいかい?

村人

あー…、いいよ。丁度手が空いたとこだし。

村人

村の連中も大喜びだし、頼まなくても食い物持って顔見にくると思うぜ。
そんな広いとこでもないけど、のんびりすればいい。

<通りすがりの女性>
坊主のとこじゃこれから湯を沸かすんだろう、それじゃ体が冷えるじゃないのさ。
嬢ちゃんたちはウチに来な!

えるふ

やった~! おふろ入れる~!

ミオラ

あ、ありがとうございます!

村人

渡りに船だな。あの世話焼きおばさんのとこなら大丈夫だろ。 じゃあ おたくらは着いてきてもらって

ヤブ

お世話になりまーす

魔術師

…………。

<農村ヘルドマ 村人の家屋の一室>

ヤブ

生き返った~!

ヤブ

風呂って言っても簡素なものかと構えてたっすけど、 まさか露天の樽風呂キメられるとは!
流石はクルムラドを支えてる農村ってところっすね

ヤブ

ミオラちゃん達もいたらよかったのにな~
魔術師さんもそう思いません?

魔術師

そんだけ元気なら 助けた側としちゃ言うことねぇよ

ヤブ

そういや魔術師さんって、どうやって俺を助けたんすか?
いつもの電撃じゃ俺もっちゃいますし―――

ヤブ

…あ。
もしかして血ぃ使いました?

魔術師

あぁ。
血の変成魔術なんて最近使ってなかったから賭けだったけどな。

ヤブ

なるほど。
道理で派手に腕切ってたワケっすね。

でもそっちも扱えるなんて流石というか…。
伊達に神経魔術師をやってないっすね、おたく

魔術師

神経魔術師なら必ず通る術だろ。
というか、理解ある辺りお前も同類だよな

ヤブ

そりゃ治療師も、分類で言ってしまえば神経魔術師っすからねー。

…とまぁ、魔術師さんへの溢れる感謝もそこそこにして、あの村人Aくんに話を聞きに行きますか。

魔術師

? 今聞くのか?
今となっちゃ依頼には関係なさそうだし、明日でいいと思ってたんだが

ヤブ

お互いあの包帯見て、吸血鬼の線を想像したわけっすし、スライムに後れを取った一因っすよ?
ストリィさんたちの話もありますし、軽く情報拾っておくのは悪くないでしょ。

ヤブ

それに…個人的に気になることがあるもんで。