2話 自称、ヤブ(1/6)
<クルムラドへの道中 休憩所にて>
んん~!
3日ぶりに食べる温かな食事…涙がにじむほどおいしいです!
(そりゃ久々の飯だろうが、その量どこに入ってんだよ)
<恰幅のいい店主>
がっはっは!
えらい腹ペコな嬢ちゃんだ。たんと食いな食いな!
にいちゃんも、あれくらい食わないとデカくなれないぜ?
うるっせぇな、余計なお世話だ。
<恰幅のいい店主>
図星だったかすまんすまん!
っはあー……。
含みのある主人の言葉に眉をしかめつつ、
器を持ってスープを飲む。
3人前以上の空いた皿が積み重なり、
向かいで食事を楽しむミオラを一瞥して
(成り行きで倒れてるコイツを連れ出したが…。
術を仕掛けた魔術師本人が追ってくる。…なんて事もなかったな。
自演をしてまで通り魔するなら、それなりに目的もありそうだが…)
?
(まぁ、俺には関係ないな)
大将~、今日は やってるっすか~?
!!
<恰幅のいい店主>
おう、やってるぜ!
腹ペコの冒険者が来てるんでな!
へ~! そりゃいいタイミングに来れた―――
あっ、どうも~。
むぐっ!!
*骨付き肉にかぶりついている最中だったため、慌てて小さく頭を下げて*
…………。
…………。
言葉を交わすでもなく、
互いの視線が一瞬交わる。
やがてそれが外れ、
魔術師は灰髪の青年と主人との
他愛ない会話を背に、
眼前に並ぶ食事に再び手をつけた。