- 0話 或る魔術師
- #00-1
- #00-2
- #00-3
- #00-4
- 1話 異邦の少女
- #01
- #02
- #03
- #04
- #05
- 2話 自称、ヤブ
- #06
- #07
- #7.5
- #08
- #09
- #10
- 3話 異端の獣
- #11
- #12
- #13
- #14
- #15
- 4話 眠れぬ夜のゴースト
- #16
- #17
- #18
- #19
- #20
- #21
- 5話 白き影
- #22
- #23
- #24
- #25
- #26
- #27
- 6話 影の支配者
- #28
- #29
- #30
- #31
- #32
- #33
- 7話 壊れ、移ろう
- #34
- #35
- #36
- #37
- #38
- #39
- 8話 邂逅
- #40
- #41
- #42
- #43
- #44
- 9話 それぞれの矜持
- #45
- #46
- #47
- #48
- #49
- #50
- 10話 澱める風
- #51
- #52
- #53
- #54
6話 影の支配者(1/6)
<クルムラド 貪欲の小枝亭>
いや~、儲かったっすね!!
テーブルに運ばれてきた
エールを受け取るや否や、それを景気よく煽る。
喉越しを堪能すると、
ヤブは満足気に息を吐いた。
よくそんな晴れ晴れと酒が飲めるな
何言ってるんすか?
窮地に遭って生還して、しかも黒字で終えられたんすよ!
良くない要素とかなくないっすか??
正体不明の危機に直面して死にかけて、 今後処遇のわからない屋敷からパクったもので飯食ってそう思えるんだから いい性格してるよアンタ
まー実際、俺は今回そこまで危ない目に遭ってないっすからね!
その点だと、ミオラちゃんは運がなかったっすけど
…………。
…………。
………あー、
だいじょーぶっすよ、ミオラちゃん!
あのゴースト、ほんとに塩で追い払えたんすから!
ほら、ミートパイも来たっすよ!
! ミートパイ…!
それまで静かだったミオラだが、
好物の肉が含まれた包み焼きパイの出現に
いくらか気を取り直したようだった。
タンカードに頑なに添えたままだった
両手が自由になり、
いそいそとパイを切り分ける様子を見てから
魔術師は視線を自身の飲料へ移した。
というかなんで魔術師さんは飲まないんすか?
は? 水飲んでるだろ。
いや…、わざわざ金を払って水を頼むなんて通っすね
酒が美味いのも 食い物が美味いのも、美味い水があってこそだろ。
水の美味さがわかんねーやつに、酒の良し悪しがわかるわけないね。
酔ってます??
酔ってねぇ。
水の美味しさ…。言われてみれば確かに…!
故郷のご飯が美味しかったのは、綺麗な水があったからかも…。
贔屓目はありますが、どれももっと美味しかったので。
へー、ここの料理は結構レベル高い方なんすけど、
それより上なら相当っすね! 気になるな~。
ミオラちゃんってどこ出身っすか?
私は東の草原の出ですね!
土地でいうと…モナルミにあたるかと。
なるほど、どーりで見かけないカッコなわけっすね。
俺はこの辺――ドルーレンヅから出たことがないもんで。
そんなに珍しいんですね、この格好…。
私もまだ似た格好の人は見てなくて。
冒険者をしていれば、その内見かけるとは思ってるんですが。
…………。
魔術師さんもドルーレンヅの出身なんですか?
ん。
…そうだな。俺もこの土地から出たことはねぇな。
それならいつか、モナルミに渡るといいかもしれませんね!
山麓から飲むお水は絶品で…、魔術師さんのお眼鏡にも叶うと思います!
…美味い水巡り、か…。
考えたことなかったな。
(そんなに好きなんですね、お水…。)