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4話 眠れぬ夜のゴースト(4/6)


<落ち着いた女の声>
すみません、全く心当たりが無いです…。
それに、ディムはまだ幼いので…。

ヤブ

(いやいやそんなアホな!
宿屋の依頼ならともかく、ギルドの依頼で子供のいたずらなんてできるわけが)

ミオラ

あの、もしかして私が持ってきた依頼、ガセだったんでしょうか…?!

魔術師

どうだかな。
依頼自体はマジでも、人相を見るなり「思ってたのと違った」だとか言って 追い返す輩もいるからな。

ミオラ

えぇ…!?

ヤブ

えーっとですね、依頼者のディム氏はゴーストなるものに悩まされていたようで…。 お嬢さんは何かご存知じゃないですか?

<落ち着いた女の声>
ゴースト…?

魔術師

(これは…。)

要件を聞いても尚、
女の声には疑問符が浮かんだままである。

一行に暗雲が立ち込み始めたその時、
勢いよく扉が開かれた。

少年

おい! お前ら もしかしてボーケンシャか!?

メイド?

そんな乱暴に開けちゃ駄目ですよ~! 扉の前に人が居たらどうするんですか~!

<落ち着いた女の声>
!? ディムにローサ…そこにいるの?!

ローサ

ごめんなさいキャロ様~、ディム様を止められませんでした~…。

ヤブ

(あちゃ~、ディム氏が子供なのはほんとっすか。
それはそれで厄介なんすけど)

ヤブ

…如何にも冒険者っすけど、ボクがディムくんっすか?
どうやってギルドの掲示板にイタズラを?

ディム

イタズラじゃねーーーよ!
召使いにやってもらったんだ!

ヤブ

……。

ローサ

す、すみません~。
坊っちゃんに言われて私が依頼を出したんです~!

<落ち着いた女の声>
…………。

<落ち着いた女の声>
…どうやら話を聞く必要がありそうですね…。
冒険者さん、家にあがってもらってもいいですか?

線

<邸宅内 応接間>

キャロ

ごめんなさい、冒険者さん。
弟のイタズラでご迷惑をおかけして…。

ミオラ

いえいえそんな―――

ディム

だからイタズラじゃねーーっての!
ほんとにゴーストが毎晩オレの部屋でぼそぼそ言って、アンミンボーガイしてくんだって!

キャロ

でも、私が見に行ってもいつも何もいないじゃない。

ディム

それだよ。
姉さんや召使いが来るとコソコソ隠れてうざってーんだ。だから部外者が必要だろ?

ヤブ

えーっと、つまり俺たちは、護衛のためにお宅に泊まり込んでいいってことっすか?

ディム

あぁ。父さんたちが留守にしてる今がチャンスだからな!

キャロ

ディム、あなたそこまで考えて…。

魔術師

そっちがいいなら構わねぇが…、報酬は?
依頼には一人5,000Gって書いてあったが、払えんのかよ。

ディム

ボーケンシャなんかに渡すのはおしいが…オレのコインコレクションの一部をやる! 出すとこ出せば高く売れる…って、父さんが言ってた!

魔術師

…と、弟は言ってるが。

キャロ

…そうですね。
これでディムの気が済むのなら、私は構いません。

ローサ

わ、私も、お二人がよろしいなら~。

魔術師

(うーむ)

魔術師

(ガキのお守りで宿代5日分か…。
話が旨すぎる気がするが、そもそもディムの言うコインの価値がほんとに高いかはわからねーし、まぁここは)

ミオラ

やりましょう!

魔術師

!?

ミオラ

宝物を差し出してまで、誰かに助けを求める…中々できることじゃないと思います。
私はこの子の力になりたいです!

ディム

おっ、ねーちゃん変なカッコしてるけど話がわかるじゃん!
オレのセンゾク護衛にしてやってもいいぜ!

ミオラ

変な格好!?

魔術師

(…そうだな、やってみなけりゃわからねぇ。)

決まりだな。色々不安だが…まぁなんとかなるだろ。

ヤブ

そっすね。
無報酬でもタダ飯タダ泊は悪くないっすし、気楽にいきましょー。