- 0話 或る魔術師
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- 10話 澱める風
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3話 異端の獣(4/5)
<クルムラド 気弱な赤髭亭>
(ヤブの奴、どういうつもりだ?
ミオラから手を引いたってのは嘘だったのか―――)
(って、いや…。
どっちも他人だし、もう俺には関係ねーだろ。)
<甲高い女の声>
それでさー、その化け物って逃げちゃったんでしょ?
!
酒場のざわめきの中から、
遭遇したばかりの話題が魔術師の耳に届いた。
<野太い男の声>
えっ、そうなのか?
<甲高い女の声>
そー。なんか見張りの魔術師がもたついて、魔術を撃たなかったらしくてさ。
野放しじゃ危ないし、騎士たちが追ってるみたいだけど。
<野太い男の声>
んじゃ、そのうちこっちに討伐依頼が出るかもしれないな。
いざってときに魔術が撃てない兵士と違って、俺たちは土壇場勝負がウリだからな!
<甲高い女の声>
あはっ、言えてるー!
(既に 噂は広がってる、か。
見てない奴は呑気なもんだな。)
…………。
(思えばあの化け物…、どこかで見たことある気がするような―――)
(…いや、気のせいか。)
<同刻:クルムラド 貪欲の小枝亭>
だから、あーいう手合は一回引くのが正解なんすよ。
一緒にいる間は、手元にあるって錯覚して余裕かましちゃうんで。
俺が誘わなかったら、あのままミオラちゃん食い下がってたでしょ?
なるほど…!
言わんとすることは なんとなくわかります!
*スープを木の椀から飲み、遠い目で器を置いて*
…けど、魔術師さんでも そう思うものなんですね…。
魔術師さんがっていうか、男って単純なんで。
…………。
そういや聞き損ねてたっすけど、ミオラちゃんはなんでクルムラドに?
知見を広めに来た、とか?
…はい。概ねそんなところです。
故郷に居るだけでは、得られる見識も、強さも…、限界があるとわかったので。
へー。向上心があって立派っすね。
なら尚の事、りよ―――お人好しそうな魔術師さんを捕まえないとっすね!
(りよ?)
は、はい!
<ほがらかな給仕>
ミートパイ3つでお待ちの方ー?
(あれを3つって。
ずいぶん景気のいいパーティーがいるようで)
あっ、それ私です!
えっ
真顔で固まるヤブをよそに、
テーブルに置かれたミートパイに
ミオラは目を輝かせる。
大皿に3枚 豪気に重ねられた
ミートパイを切り分けながら、
ピース状にしたパイを皿に取り分けた。
もちろんヤブさんも食べて大丈夫ですよ。
元々ヤブさんの奢りなんですし!
…………。
(…これはアレを抜きに、魔術師さんには早急にパーティーに入ってもらわないとっすね…。)